ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
この詩を読んでいて、自分への戒めだと思いました。
自分で立てた志、自分で描いた夢、全て自分が決めたこと。
自分の感受性を守れるのは、結局、自分だけです。
当たり前に自分の感受性を磨いている人に、
他人の感受性が重なっていくものなのかもしれませんね…
茨木のりこ
(1926年6月12日〜2006年2月17日)
大阪府生まれ。日本を代表する女性詩人にして、
童話作家、エッセイスト、脚本家。